アラビアのロレンス

来週の、タマフル、シネマハスラーの課題作品として。完全版がニュー・プリントバージョンでリバイバル上映されている。初見。なるほど、こんな踏み込んだ作品だったとは。なかなかに狂っている。

1962、英、227分。監督:デビッド・リーン、出演:ピーター・オトゥールアレック・ギネスアンソニー・クイン 他。

そもそも、主人公であるロレンスの見た目が、まったくステレオタイプなヒーロー像と異なっている。青い目に、なまっちろい貧弱な体。中盤で、男色の敵将兵に上半身を裸にされ(またこの裸が、どうみても軍人には思えない、きれいでしまりのない体)、乳首を摘みあげられるシーン、そしてそれに続く、自陣でのオネェ的な歩き方で駆け寄るシーンに、なんじゃこりゃと。

前半は、広大な砂漠、主人公の葛藤など、「名作」らしい、まっとうな作りだが、後半から徐々に不安定な展開に。ロレンスの動機や判断基準が良く分からなくなってきて(それは異常な環境・体験の中で、気がふれてくる結果でもあるのだろうが)、それに合わせて物語も雄大なんだか、矮小なんだか、よく分からなくなってくる。そんな中に、ダマスカス攻略の途中で遭遇したトルコ部隊との交戦(というか殺戮)のシーンのギリギリの感情表現など、踏み込んだ場面が多々。その狂気への踏み込み方に古さは全く感じないなぁ。カタルシスのない、突然訪れるエンディングも良い。これは見て良かった。