イースタン・プロミス
映画全体が、ある男がたどる極道一代記のプロローグのようだ。
いくつかの映画評にて高評価だったので見てみた(ネタばれ注意)。
闇ト倒錯ガオレノトモダチ「イースタン・プロミス」−深町秋生の新人日記
http://d.hatena.ne.jp/FUKAMACHI/20080626
もはや、夢は醒めた 『イースタン・プロミス』−アヌトパンナ・アニルッダ
http://d.hatena.ne.jp/anutpanna/20080628#p1
製作2007年。監督デヴィッド・クローネンバーグ 。英/加/米合作。100分。
舞台はロンドン。助産婦のアンナ(ナオミ・ワッツ)は、赤ん坊を産んで死亡した少女の身元を突き止めようとする過程で、ロシアン・マフィアのニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)と出会い、ロシアン・マフィアの暗闘に巻き込まれていく。
事前知識がなかったこともあり、直後は正直よく分からなかった。ロンドンにおけるロシアン・マフィアの存在、売春組織による人身売買、麻薬、KBGやFSB、タトゥーの持つ意味。そして、何より最後半のストーリー展開のためだ。
その後、上記の映画評を見直していて、なるほど、と膝を打ったのだった。
本作はある意味最初のクライマックスで終了してしまうからです。本当に正統なマフィア映画なら、成り上がってきた男がここからボスという王位を簒奪する過程を見せていくはずのところで物語は途切れ、主役とヒロインが共闘してひとつの苦境を切り抜ける場面で映画は終わります。
from もはや、夢は醒めた 『イースタン・プロミス』−アヌトパンナ・アニルッダ
この映画のエンディングには、わかりやすいカタルシスがない。むしろ、ストーリーの新たな展開を予感させるものだ。それは、エンディング直前に、ニコライが何者であるかが観客に明かされるからだろう。ずっと謎の存在であるニコライに、観客はずっと感情移入できない。しかし、正体が判明した直後のエンディングで、初めて観客はニコライの動機(の一端だが)を理解し、感情移入してシーンを見られるのだ。そこに、ニコライ視点で語られる次のストーリー、あたかもこれまでがプロローグで、ここからが本編であるかのような期待を抱いてしまうのだろう。
語りすぎない、と受け取ることもできる。でも、個人的には最後にガツンとした仕掛けがもうひとつ欲しかったなぁ。もう一度見たらまた印象が違うかも、と感じた。
(参考)予告編