仲俣暁生「文学:ポスト・ムラカミの日本文学」

ひょんなきっかけで読むことになったのだが、ここ10年、小説にはほぼ接してないので、あーだのこーだの言う資格は全くない。そんな立場ながら、記録として感想を書き留めておこう。

「はじめに」にあるように、本書は、1970年代後半に登場した二人の「村上」と、彼ら以降に登場した日本の小説の書き手たちの系譜を、歴史的・構造的にまとめようと試みたものである。その試みは、僕自身の文学以外のカルチャーの潮流の理解から判断するに、なんとなくそうかな、と思わせるほどには成功している。

ただ、日本文学の全体像のどの程度の範囲をカバーしているのかがよく分からない。本文中でも言及されているとおり、女流作家への言及が相対的に少ないし、主要文学賞の受賞者のカバー率もけっして高くない。また、文学的な位置付けの議論において必ずしも重要ではないだろうが、取り上げられた作品がどれだけ売れたか、それは日本の小説の売上に対してどれぐらいのウェイトを占めるのかといった情報もない。全体像との位置付けを、もう少し定量的に整理すると、歴史的・構造的なまとめとしての価値が高まったのではないかと感じた。


文学:ポスト・ムラカミの日本文学   カルチャー・スタディーズ

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