知っていることに意味がある〜ダーウィンの悪夢

DVDで。2004年製作のドキュメンタリー。フーベルト・ザウパー監督。

JMMで興味を持った(詳細は下記に引用)。で、本映画に対して、先進国的な視点のバイアスを指摘したエントリを読んだ上で鑑賞。

ダルエスサラーム便り No.49 - ダーウィンの悪夢
http://jatatours.intafrica.com/habari49.html

確かに目をそむけたくなる場面は多い。ただ、冷静、かつ多元的な価値観を前提とした認識・検証を心がけたいし、こういう世界、現実を知っていることに意味がある。ということでお薦めです!


ダーウィンの悪夢 デラックス版 [DVD]

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アフリカには多くの問題があります。というより、現代アフリカは、貧困から環境、内乱やエイズなど、トラブルと難題のるつぼです。そもそも、欧州よりはるかに広い面積にある国々を、アフリカと一括りにすることが何かを象徴しています。アフリカの諸問題を考えるときに、いつも思い浮かべるのが『ダーウィンの悪夢』というドキュメンタリー映画です。監督のフーベルト・ザウパーとの対談は、以前JMMでも配信しました。少し長くなりますが、ここで彼の言葉をもう一度紹介します。

「アフリカで飢餓があり、そして戦争があり、社会的な崩壊があり、不正義があるということは、人びとはみんな知識として知っています。ある意味で知り過ぎていると言ってもいいと思います。アフリカでエイズが蔓延して、アフリカの人びとがエイズで死につつあるということは、誰もがうんざりするほど聞かされています。ですから、またそれを聞かされると、人びとは、あ、それはもう知ってるよ、また同じことだ、もういいよ、となります。情報過多の状態にあるわけです」

「そうではなくて、その状況の中で一人を取り出し、その人を映画的なコンテクストに置いて、顔と名前を与えた上で、その人がどういう経緯でエイズに罹ってしまったのかということ見せたいと私は思うんです。その関係性を見せていきたいわけです。つまり映画を通して、既に知られていることを、『知られていること』としてではなく、『知りたいこと』に変えたいのです」

「しばしばドキュメンタリーの中で、どこか非常に問題の多いところを見せて、たとえばそこに非常に綺麗なアメリカ人のブロンドの女の人が行って、その可哀相な人たちを助けるという形で問題を提示して、すぐに解決策を見せるというものがあります。私は、それはほとんど知的犯罪だと思っています。そういうふうに助けに行く女性を見せる、誰かがその可哀相な人たちの世話をしているということを見せる、解決策を見せるということによって、観ている人たちの責任を解放してしまうわけです。そうすると、観ている人たちは、そこで責任を解放されて、『あ、この女の人がこの可哀相な人たちの面倒を見たんだ』と思って静かに寝られるわけです。でも、私は、みんなが静かにぐっすり眠れるような映画は作りたくありません」

 アフリカの諸問題は簡単には解決しません。ひょっとしたら50年、あるいは500年かかるかも知れません。「考え続ける」ことが大事ですが、楽しいことではないので、わたしたちはともすれば、アフリカの諸問題を「一度考えること」で、意識を安定させようとします。より重要なのは、フーベルト・ザウパーのように、見る人の意識を不安定・アンバランスにすることで、考え続けるためのコアのようなものを植えつけようとする作業だと思います。

[JMM482M]Q913「基礎年金全額税方式」試算の注意点 編集長から(寄稿家のみなさんへ)より抜粋