元気が出る〜遠藤誉「中国動漫新人類」

動漫(アニメ、マンガ)を切り口に、それだけに留まらず、現代中国の現象的、思想的実態から、その政治的、歴史的背景まで、関係者の生の声を交え、普段あまり聞いたことがない内容が盛りだくさん。中国以外の部分(アニメ・マンガ自体や日本における反中的状況など)の事実関係や、本・文章の構成など首をひねる部分はある。しかし、その前のめりな感じ、60歳を超えた筆者が、自らの好奇心の赴くままにどこでも行き、誰とでも会う、そのバイタリティあふれる取材過程の様子そのものが、本書の大きな魅力ではないか。お薦め!


中国動漫新人類 (NB online books)

中国動漫新人類 (NB online books)


内容的な部分は以下を参考

[書評]中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす(遠藤誉)−極東ブログ 2008/3/26
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2008/03/post_cd64.html

本書は、学術的な整理がなされた本ではない。ルポルタージュに近く、筆者の好奇心の赴くまま、行きたい所へ行き、話したい人と話す、そして思ったことを(時系列的に、垂れ流すように)書く!という本。なので、同じ主張が何度も繰り返されるし、読み手には必要ない部分もあるし(海賊版の数字の調査の詳細な経緯、とか「スラムダンク」は息子や友達から借りてきた、とかどうでもいいから!www)、決して本の構成として優れてはいないと思う。しかし、それが結果として(意図的かはともかく)、本書を、単なる解説書ではなく、筆者の知的好奇心の追及の過程を追体験できるエンターテイメントとたらしめている。

また同時に、(稲葉先生も指摘するように)、全編に溢れる中国(の若者)への愛情が、心地よい読後感をもたらしているであろう点も指摘しておきたい。