映画としてはおもしろくない〜靖国 YASUKUNI

「映画としては」おもしろくなかった。もちろん靖国をめぐる「奇妙な」人々のアレコレは興味深いのですが。事前に聞いていた、宇多丸師匠による批評*1の印象が強すぎたかもしれません。

おもしろくない理由は大きく2つ。1つめはその映画で伝えようとしていること、表現しようとしていることが作り手側で整理しきれていない、と思われること。見終わっても何が言いたいのかよく分からない。

ラストでいろんな映像を重ねていくところには、靖国神社に太平洋(大東亜)戦争やら天皇を関連付ける意図はなんとなく感じる。でも「だから何なの?靖国を認めることは軍国主義、ひいては戦争につながる、とかそんなチンケなことを今更言いたいわけじゃないよね!」と言いたくなるくらい、新たな視点を読み取れない。そもそもその映像の中には意図すら不明なものも多い。で、極めつけはラストに至るまでのエピソードが全くこのラストを支えていないということだ。他の方*2も指摘していることだが、この映画の面白いところは靖国をめぐる人々のアレコレで、そこを見せたいのかなと思ってみてるのにラストがそれかよ!とかなり唐突感がある。このラストのために、それまでの面白い部分についても、結果はともかく作り手はそのおもしろさをきちんと咀嚼できてないんだな、と感じてしまうのだ。これが反日的なのかどうかすら、僕には読み取れなかった(もちろん反日かどうかの態度を表明することが重要なわけではないのだが)

2つめは稚拙な映画作成スキル。1つめの何が言いたいのかよく分からないことの原因でもあるだろう。

例えば映画の軸となる刀匠へのインタビュー。まず質問内容が難しい。何を聞いているのかよく分からない。聞く相手のことを考えた、答えやすい質問になっていない。あれでは相手が黙ってしまうのも無理ないだろう。一方で、(会話の文脈としてはよく分からないのだが)、その内容は物凄く恣意的。ほとんど誘導尋問に近いと感じた。宇多丸師匠は、インタビュワーである監督が外国人であり、日本語が下手だからと言っているが、それ以上にインタビューの技術不足。また同シーンでは、バックに戦争当時?の写真が重ねられるのだが、それも演出として安易。

また、上記のインタビューシーンもそうだが、全編を通して音楽の使い方が浅はか。過剰な意味を付加しようとするかのような使い方が素人くさい。映像のつなぎ方も意図的というよりは、意図を表現するだけの技術がないのではないか。だからこそ、何が言いたいのかよく分からない。

ということで、映画としてはつまらなかったです。ただ興味深い映像は満載なのでお薦め。騒ぎたい人以外は映画館で見る必要はないだろうな。

ちなみに土曜の午後でしたが、観客は満員。60を超えてると思われる方も多数いらっしゃいました。途中で大声を張り上げたり、シュチョー始めたりする人がいらっしゃったりするのかと内心期待していましたが、皆さん礼儀正しかったです。残念!


これも参考に、

映画『靖国 YASUKUNI』を観た感想|電撃ネットワーク ギュウゾウ ブログ『ギュウゾウ新聞』
http://ameblo.jp/dengekigyuzo2006/entry-10096376423.html

*1:ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル
http://www.tbsradio.jp/utamaru/2008/04/index7.html

*2:例えば(毎度引用させてもらってますがw) 靖国」の真実 運動家はさっさとソープに行け - ACID TANK
http://d.hatena.ne.jp/acidtank/20080511/p1