渋谷毅インタビュー@JAZZ TOKYO 2007/12/14

http://www.jazztokyo.com/interview/v62/v62.html

下のエントリーに関連して。渋谷さんとインタビュワーの方は面識があるようだけど、渋谷さんの無理してまで話にのってかない感じが何とも渋谷さんらしい、のだろうか。

でも、そんなのらりくらりとしたやり取りの中に、渋谷さんの音楽性につながる、含蓄のあるフレーズが光ります。

以下、一部抜粋

Q:メロディとリズムの関係ですが、とくにソロの場合、渋谷さんはどのように考えてますか。
渋谷:ほとんど意識してないね。リズムをキープすれば楽しくなるだろうとは思ってもあえてキープしない。つまり自由に弾いてるんだ。リズムを自由に弾くようになってずいぶん楽になった。ジャズとかジャズでないとかもあまり考えないようになった。もちろん、ジャズのエッセンスは大事だけどね。
(中略)
ピアノとベースとドラムなんていうトリオになってしまうと決まった演奏になり勝ちでね。僕自身ももともとあまり得意でないし。ヴォーカルと二人でやるとか。とにかく自由に動きたいのね。

Q:スタンダードを演奏する場合、人生経験の少ない若いミュージシャンが弾いても良さが出ない。人生経験や音楽経験を積んだ年配者ほど内容が良く理解できて味が出せる、といいますが。
渋谷:そんなことは100%ない。音楽にいちばん大事なことは「美しいこと」を追求する心なんだね。「美しいこと」をイメージできないミュージシャンはいい演奏はできないんだよ。
Q:それは年齢には関係ないことですか。
渋谷:関係ない。いくら経験者でもそういう心を持っていない人はだめ。

Q:今度のソロ・アルバムで特徴的なのは、メロディをストレートで弾いている例がほとんどないことですね。独特のパラフレーズが施されている。
渋谷:そう。どんなメロディもフレーズが独特のニュアンスをもっているんだけど、それをどう自分なりに解釈して美しく表現しようかと考える。自分でも納得できるようにうまくはなかなかいかないんだけどね。だけどうまくいった時は自分独自の解釈ができたということが確信できるんだ。同じメロディでも誰も自分のようには解釈して弾いていないということがね。
Q:技術的にはどういう風に説明できますか。
渋谷:簡単にいうとメロディのリズムへの乗せ方というのかな。微妙なオンとオフの差、メロディとリズムのズレの妙味といえばいいかな。それを音が出る瞬間ごとに判断して音楽にしていく。

Q:エリントンはどこが魅力ですか。
渋谷:ピアノはもちろんだけど彼の存在すべてが素晴らしいんだね。いい加減で。かと思うといい加減ではなくて。そのよく分からないところがね。
Q:曲もいいんでしょ。
渋谷:曲もいいんだけど,いい加減なんだな。マイルスももちろんいいんだけど狭いんだね。エリントンの場合は何か茫洋としていてつかみどころがないんだね。
Q:いい加減ですか。
渋谷:そう,いい加減なんだ。エリントンの作る曲もいい加減だね。いい加減というのは自由ということではなく、文字通りいい加減なんだ。たとえば、録音の3、4時間前にあわてて作った感じね。アイディアがそのまま出て来たような。そこがまた力強さの要因でもあるんだけど。ビリー・ストレイホーンの場合は、熟して出てくるんだけどね。彼は西洋音楽に通じているから、出たアイディアを再構築して作品に仕上げて出してくるタイプだね。
Q:でも、そのいい加減なエリントンの曲がどうしてあれほどスタンダードとして愛奏されているんでしょうね。
渋谷:いい加減だけどいい曲だからだろうね。いい加減といい曲というのは関係ないんだね。そのいい加減さが僕は大好きなんだよ。僕もそうありたいと願ってはいるんだけど。


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